gaining sum

2018年01月21日

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2018年01月21日

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2017年12月31日

"?課長のネクタイ?・・・・・・・・・・ちょっと待って・・・・」 いきなり課長のネクタイ、しかも昨日の"

"?課長のネクタイ?・・・・・・・・・・ちょっと待って・・・・」
いきなり課長のネクタイ、しかも昨日のを聞いて来たわたしに戸惑いを見せたけど、そこはまず置いといて思い出そうとしてくれているようだ。
「なに?課長のネクタイがどうしたって?」
他の皆さんは、課長のネクタイを思い出す事をはなからあきらめているようで、なぜ聞いて来たのかを知りたいご様子。
「あのですね・・・・」
普段、自分の事をあまり話さないし、自分から何気ない話さえもしてこないわたしが話しかけた事が、驚きと同時に嬉しかったそうで、本当に何でもないような奢ってくれた""課長""を探しているだけだって言う話も真剣に聞いてくれた。
その後の会話が無くなったわたしを見て、苦笑いでそれぞれの仕事に戻って行くようだ。
やっぱり、昨日わたし達に奢ってくれたのは福田課長だったんだ。
昨日のうちにわかってれば、今朝会った時にお礼を言えたのに・・・・・
今朝の時点でお礼を言わないわたしの事を、不届き者と思ったかもしれない。
部長から頼まれた資料本とパンフレットづくりは、ちょっとやそっとじゃ終わらない位の量。
心してかからないと残業は確定的。
ましてや、そのほかの仕事も当然同時に進めて終わらせなければならない。
ともすれば、お喋りしている時間も勿体ない。
って言っても、みんなの仕事の手を止めたのはわたしなんだけどね・・・・
「あ、ちょっと資料室に行って来ます」
ある商品の説明文を打ち込もうとしたら、少し簡素な短い説明文しか書いていない。
これではお客様には伝わらないかもしれない、と加筆修正を加えておこうと思い資料室に向かった。
資料室は、数ある会議室の中で一番大きくて広い会議室がある15階の奥の方に位置する。
ここの階で役職組の会議をしているはずだからと、エレベーターではなく階段で上がることにした。
静かな空間にエレベーターの到着音って響くんだよね・・・・・
静かな空間なのかどうかは知らないけど。
どうせなら階段で昇った方が安心かもしれない。
15階に着いて、足音を立てないように扉の閉められた会議室を通り過ぎる。
ここの階は、外からのお客さんを招いての会議もするために、床の上にはグレーのカーペットが敷かれているからヒールの音は消されている。
それでも静々と奥の資料室に向かって行き、借りてきたカギで開けて中に入ると、普段、人の出入りが少ないからか埃っぽい。
窓を開けて空気を入れ替えたいけど、お隣にガタガタ聞こえると嫌だしな・・・・・
顔をしかめつつ、自社製品のデータが載った百科事典のような大きくて分厚い資料本の棚に行き、アイウエオ順で探し始めた。
順に見ながら少しずつ横に移動すると、
「あ!」
探していた本を見つけて、つい声を出してしまった。
ついでにニマって締まりのない顔をして、そんな自分を恥じた。
でも・・・・・ッム!
なんであんなに大きくて重たい本が棚の一番上に置いてあるのよ!
背の低いわたしだと、背伸びしたって指が掠るだけ。
たしか・・・・・
キョロキョロして踏み台を探すも、所定の場所にはないようだ。
っもう!最後に使った人は元に戻しておいてよね!
ここは自分だけしかいないと言う安心感から、普段は表に出さない素の感情をモロに表しちゃっている。
ひとりプンプン怒りながら踏み台を探そうと来た道を戻りかけたところで気がついた。
こちらを見て驚く顔をしている福田課長の姿が目の前にあった。
シマッタ!という顔と驚く顔は表に出さずに隠しながら
「どうされたのですか?まだ会議中では?」
そ知らぬ顔をして彼がここにいる理由を問いかけた。
「驚いたな。キミとは4年?5年?それくらいの付き合いだけど、ここの部屋に入って5分もしない短い時間で、見た事もないキミのいろんな顔を見れた・・・・・」
目の前に宇宙人が出て驚いているような感じで、ボソボソと言葉を落としている。
たしかに、入社して研修などをこなした後の6月から課長とずっと同じ部署で働いている。
最初の内は緊張で自分を曝け出す事が出来なかった。
慣れてきたころに、あの噂が出回ってあこがれていた先輩に拒絶されてしまい、その後は自分を曝け出す事をやめてしまった。
だから、課長が言っている事もまんざら大袈裟でもないわけだけど・・・・・
「し、失礼します」
戸惑いを感じつつも、やはり繕う顔を見せずに無表情で彼の横を通り抜けて部屋から出ようとしたけど
「本はいいのか?」
すり抜ける寸前で腕をつかまれて歩を止められてしまった。
「大丈夫です。元に戻ります」
居心地悪いこの状態で、彼が戻る気配もなしでは自分が部屋を出て行った方が無難だろうと思ったのに、掴まれた腕はなかなか放してもらえない。
それどころか、追いつめられてわたしの背には棚が当たっている。
タラ~っと冷汗が背中を伝って落ちて行く感覚が、なお更緊張感をマックスにさせているけど、自分で意識して表情を消す事はすでに曲芸の域まで達していることを自認しているわたしは
「課長。まだ仕事が残ってますので戻りたいのですが」
一層意識して感情を殺しまくった。
これは嘘じゃない。
たしかに部長に頼まれた仕事がたんまりと残っている。
ここで時間をロスしてしまっているから、今日のノルマが達成できずに残業は確定だろう。
「自社製品カタログを取りに来たって事は、部長に頼まれた資料本?」
背の高い彼が、背の低いわたしを見下ろしながら話し出し、次第に腰を落として目線を合わせて来る。
「はい。来週使う物ですので、出来れば今週中には目途をつけておきたいので戻ります」
扉側に立つ彼は、部屋から出ないように壁を作っている状態。
「なんで、自分を隠すの?」
わたしの話は丸無視の課長に苛立ちが湧いてくるけど、それも隠し
「隠してません。これが自分です。課長、会議の途中ではないのですか?」
壁を通して、隣からは話し合う声が聞こえて来ている。
「ああ、まだやってるよ。僕は電話がかかって来たから通路に出てきた」
そこでわたしがここに入るのを見て、彼も入って来たのか・・・・
それでも、長い時間退座していることもできないようでチラッとブランド物の腕時計を見ている。
課長職で、ましてや一番最年少の29歳(だったかな?)にしての課長では、役職組では当然一番の下っ端。
サボるわけにもいかないようで
「今日は残業だな?」
表情には出していないと言う自信はあるが、心でも読まれたのだろうか?
ずいぶんと自信満々と聞いてくる彼に無言で抵抗すると
「今日の会議は、昨日よりかは早く終わるはずだ。
残業でなくても、俺が終わるまで待っている事」
それは業務命令なのだろうか?
終業後の事まで指図されなくてはならないのか、そしてそれを容認しなくてはならないのだろうか?
「待つ待たないはお前が決めればいい。まあ、お前の事だから待ってるだろうけどな」
頬に手を当てられて、感情は出ていないようだけど引きつりつつあるのは自覚している。
「・・・・・っふ。どの商品のが欲しいんだ?」
意味ありげに笑ったあと、壁を作っていた体を棚から離して、先ほどのお目当ての棚の方に歩き出した。
固まったままでいるあたしに向かって
「ほら!取ってやるから、言ってみん!」
あぁ・・・・。
踏み台を探していたこともわかっていたのか・・・・・
「ホ行の本をお願いします」
取ってくれるのならありがたい。踏み台を探す手間が省けるし、何よりも早く課長から離れてこの部屋を出たい。
背伸びをしなくても手を上にあげただけですんなりと取れる課長の姿を見ると、自分が低身長なのが嫌になるし、この男の頭をハンマーでぶっ叩きたくなる。
カチャカチャ鳴る音は、わたしには心地よい音だったはず。
それなのに、今のわたしには不快に感じてしまう。
それもこれも、資料室から戻ったわたしに、
「アラーキー!待ってたよ!」
やめてと何度もお願いしてもやめる事をしない、佐藤さんが勝手につけたわたしの呼び名を叫ぶ声にゲンナリとした。
わたしよりも3つ年上(昨日誕生日だったらしい)の佐藤さんは、パソコンが若干・・・いや、かなり?苦手らしい。
エラーが発生すると、すぐにそれを放棄してしまう。
わたしがいなければ戻るまで待つことを優先させる。
結局は、今回の佐藤さんの注文の方に時間がかかってしまい、わたしが自分の仕事に戻ったのは退勤時間の30分前。
わたしに任せるだけだった佐藤さんは、使われていないパソコンを使って、さっさと自分の分の仕事を終わらせることに成功している。
わたし?
「っもう!」
だれもいなくなったフロアで、不機嫌さマックスで声にまで出して仕事をしているよ?
それも、課長の存在を頭から消え去らせるほどにね。
待ってろと言われた事も、会議が長引いているのも忘れてるね。
もう、全員が帰ったと思って、顔には皺が出来るほどに歪ませてキーボードを叩いてますもの。
「遅くなったから怒ってるのか?」
そんな言葉が聞こえて来るとは思ってもいないわたしは「っどぁ!」と謎の言葉を叫んで、思わずイスを後ろにおっ放うほどに驚いちゃってますが?
「なんだ?どぁって・・・」
一瞬、呆れたような顔をした後にすぐに笑い出した福田課長。
「驚かさないでください。もうだれもいないと思ってたのに・・・・」
うしろにすっ飛んで行って、ひっくり返ってしまったイスを元に戻しながら文句を言わせてもらえば
「なんだ、待ってたんじゃなかったのか?」
今度は眉尻を上げて少し不機嫌なお顔。
この人って、いろんな表情を惜しげもなく見せるのね。
油切れの所為か、キュイキュイと変な音をさせながらイスを引っ張って来て定位置に戻しながら座り
「まだ終わらなかっただけです。課長は終わられたんですか?思ったよりもかかってたようですね」
先ほどの課長の予想では、昨日よりも早く終わるだろうと言ってたけど、実際はさほど変わらない時間に終わったようだ。
「会議は終わったけどな」
あぁ、会議だけですか。
「お疲れ様です。わたしはもう少しかかりますので」
こうやって喋っていても、手と視線は仕事に戻っている。
人の事まで心配などしていられない。
「あとどれくらいだ?」
その場で聞けばいいものを、なぜか背中越しに手を伸ばしてマウスを操作する課長に
「課長。重いです」
若干、課長の体重もわたしの背中に乗せられている。
「俺は軽い方だ」
あんたの体重なんて興味はない。わたしに乗せている体を離せと言ってるまでだ!
「だいぶ終わってるじゃないか。残りは明日でも構わないな」
その言葉は、わたしに向かっての問いかけではなかったのですか?
勝手に操作させて保存させて終了させるのはやめていただきたかったですね。
阻止しないように、マウスを持つ反対の手でわたしの体を制御するのも一緒にやめて欲しかったです。
何気に抱きしめられているような錯覚に陥ってしまいますが・・・・・
パソコンの画面はシャットダウンされて光を放つことを終えて、変わりに課長の片腕で抱きしめられているわたし達の姿をぼんやりと映し出している。
片腕で抱かれている状態から、両腕で包み込まれるように抱かれる形に変わって来た時に
「課長?これはどういうことでしょう?」
抱かれている意味が解らない、と問いかけた。
「頭のいいお前ならわかるだろう?俺がお前を抱きしめている」
先ほどの資料室の途中辺りから言葉使いが変わっている。""僕""と自分の事を呼んでいたのが""俺""に、""キミ""か名字呼びだったわたしの事を""お前""と表現しだした。
他の同僚に見せる課長の姿は仮面をかぶった仮の姿か・・・・
わたしと対して変わらないな・・・・・
「なぜ、わたしは抱かれているのでしょう?」
そもそも、それを聞いてるんだよ!
「その答えは一つしかないだろう?」
抱きしめながら首の後ろに顔を埋めるのはやめていただきたい。
こしょばゆいでございます・・・・・
「はて?」
意味が解らずしょうじきにわからないと首をかしげる仕草を取りながら、埋められた課長の顔を振るい落とす作戦だったけど
「逃げるなよ・・・・・」
すぐにまた顔が近づいて来ただけではなく、今度はわたしの顔を押しやるように耳下の首筋に唇を当てられてしまった。
ぞわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・
背中を走る悪寒に、溜まらず体が震えた。
「っふ、弱点はここか・・・・」
首筋が弱い事がバレてしまったようだ。
「あの。わたしは仕事が終わったらしいので帰りたいのですが」
終わらせるつもりはなかったけど、すでにパソコンの電源も落とされたのでは仕方がない。
「ああ、帰ろうか。どこで食べて行く?」
「っはい?食べて行く?」
なぜ、あなたと夕飯を共にすることになっている?
「どうせ、帰ったら食事はとるだろう?だったら食べて帰れば手間が省ける」
・・・・・うん、そうだな。
帰ってから支度をして食べ始めるのは9時半を過ぎるだろうし・・・・
「だろ?ほら、着替えておいで」
抱きしめていた腕をほどかれると、重いと文句を言いながらも暖められていた熱が飛んで行くような切ない気持ちになってしまった。
座っていたイスを引っ張り出して、脇の下に手を入れて立たされると
「ほら!俺に着替えさせられたいのか?」
言いながら制服のベストのボタンに手を伸ばす課長の手を止めて
「それには及びません。では着替えて参ります。が、わたしは帰ります」
もともと一緒に食事をするなんて、わたしはひと言も言っていない。
気を遣う上役との食事なんて、真っ平ごめんだ。
「はいはい。いいから着替えて来いよ」
立ち上がったままのわたしのお尻を叩くのはセクハラですよ?
訴えましょうか?
まあ、抱きしめられていた時点でセクハラでしたけど。
仕方なしに引き出しから小さいバッグを取り出して、更衣室の方に向かった。
・・・・・・・・・・・・
「いらっしゃぁ~い」
≪美咲≫と絞り染めされた暖簾をくぐり抜け、扉を開けて中に入ると和服姿の女将さんがニコリと笑ってこちらを振り向いた。
「あれ?青葉クン久しぶりね?」
課長の顔を見てそう呼ぶ女将さん。
青葉クン?だれ?
キョロキョロとわたし達の他にもだれかお客でも来たのかと探す素振りを見せれば
「お前は上司の名前ぐらい覚えておけよ!」
再び繋がれていた手をほどき、その手で頭を小突かれた。
「青葉クン?」
課長の顔を指さして確認すれば
「そうだ」
不機嫌さマックスの課長が頷いた。
クスクス笑ってこちらに近づいて来た女将さんが
「いらっしゃいませ。青葉クンの会社の方ですか?」
聞きながらあたし達が着ていたコートを受け取ってくれる。
「はい。荒木戸と申します」
背の低いわたしよりも、少しだけ高い目線の女将さんに答えると
「この店の女将の美咲です。この子は田舎が一緒でご近所に住んでいたのよ」
どうぞ、と促されてカウンターに腰掛けた。
週半ばというのに、結構なお客さんでそこしか空いていなかったから。
「お腹が空いてるんだ。適当に出してよ。お酒は、なになら飲める?」
美咲さんに向かって注文していた課長が、最後はわたしに聞いて来て
「じゃあ、とりあえずビール下さい」
仕事終わりと言えばビールが恋しいのはどの季節でも共通な事。
「じゃあ俺も。あ、ここトン汁が美味いよ。食べる?」
うん、食べたいかな?コクリと頷くと美咲さんが
「はい、ちょっと待っててね」
笑顔で受けてくれて、厨房の方に向かって行った。
「課長、東京の方じゃなかったんですね」
てっきりこの洗練されたイケメンさんは東京生まれなのかと思ってた。
「生まれは長野。高校からこっちに来ているから半々くらいだな」
16年間長野で暮らし、その後は東京で暮らしていると言うことか。
「俺の同級生のお兄さんと、美咲さん"  


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2017年12月31日

"?課長のネクタイ?・・・・・・・・・・ちょっと待って・・・・」 いきなり課長のネクタイ、しかも昨日の"

"?課長のネクタイ?・・・・・・・・・・ちょっと待って・・・・」
いきなり課長のネクタイ、しかも昨日のを聞いて来たわたしに戸惑いを見せたけど、そこはまず置いといて思い出そうとしてくれているようだ。
「なに?課長のネクタイがどうしたって?」
他の皆さんは、課長のネクタイを思い出す事をはなからあきらめているようで、なぜ聞いて来たのかを知りたいご様子。
「あのですね・・・・」
普段、自分の事をあまり話さないし、自分から何気ない話さえもしてこないわたしが話しかけた事が、驚きと同時に嬉しかったそうで、本当に何でもないような奢ってくれた""課長""を探しているだけだって言う話も真剣に聞いてくれた。
その後の会話が無くなったわたしを見て、苦笑いでそれぞれの仕事に戻って行くようだ。
やっぱり、昨日わたし達に奢ってくれたのは福田課長だったんだ。
昨日のうちにわかってれば、今朝会った時にお礼を言えたのに・・・・・
今朝の時点でお礼を言わないわたしの事を、不届き者と思ったかもしれない。
部長から頼まれた資料本とパンフレットづくりは、ちょっとやそっとじゃ終わらない位の量。
心してかからないと残業は確定的。
ましてや、そのほかの仕事も当然同時に進めて終わらせなければならない。
ともすれば、お喋りしている時間も勿体ない。
って言っても、みんなの仕事の手を止めたのはわたしなんだけどね・・・・
「あ、ちょっと資料室に行って来ます」
ある商品の説明文を打ち込もうとしたら、少し簡素な短い説明文しか書いていない。
これではお客様には伝わらないかもしれない、と加筆修正を加えておこうと思い資料室に向かった。
資料室は、数ある会議室の中で一番大きくて広い会議室がある15階の奥の方に位置する。
ここの階で役職組の会議をしているはずだからと、エレベーターではなく階段で上がることにした。
静かな空間にエレベーターの到着音って響くんだよね・・・・・
静かな空間なのかどうかは知らないけど。
どうせなら階段で昇った方が安心かもしれない。
15階に着いて、足音を立てないように扉の閉められた会議室を通り過ぎる。
ここの階は、外からのお客さんを招いての会議もするために、床の上にはグレーのカーペットが敷かれているからヒールの音は消されている。
それでも静々と奥の資料室に向かって行き、借りてきたカギで開けて中に入ると、普段、人の出入りが少ないからか埃っぽい。
窓を開けて空気を入れ替えたいけど、お隣にガタガタ聞こえると嫌だしな・・・・・
顔をしかめつつ、自社製品のデータが載った百科事典のような大きくて分厚い資料本の棚に行き、アイウエオ順で探し始めた。
順に見ながら少しずつ横に移動すると、
「あ!」
探していた本を見つけて、つい声を出してしまった。
ついでにニマって締まりのない顔をして、そんな自分を恥じた。
でも・・・・・ッム!
なんであんなに大きくて重たい本が棚の一番上に置いてあるのよ!
背の低いわたしだと、背伸びしたって指が掠るだけ。
たしか・・・・・
キョロキョロして踏み台を探すも、所定の場所にはないようだ。
っもう!最後に使った人は元に戻しておいてよね!
ここは自分だけしかいないと言う安心感から、普段は表に出さない素の感情をモロに表しちゃっている。
ひとりプンプン怒りながら踏み台を探そうと来た道を戻りかけたところで気がついた。
こちらを見て驚く顔をしている福田課長の姿が目の前にあった。
シマッタ!という顔と驚く顔は表に出さずに隠しながら
「どうされたのですか?まだ会議中では?」
そ知らぬ顔をして彼がここにいる理由を問いかけた。
「驚いたな。キミとは4年?5年?それくらいの付き合いだけど、ここの部屋に入って5分もしない短い時間で、見た事もないキミのいろんな顔を見れた・・・・・」
目の前に宇宙人が出て驚いているような感じで、ボソボソと言葉を落としている。
たしかに、入社して研修などをこなした後の6月から課長とずっと同じ部署で働いている。
最初の内は緊張で自分を曝け出す事が出来なかった。
慣れてきたころに、あの噂が出回ってあこがれていた先輩に拒絶されてしまい、その後は自分を曝け出す事をやめてしまった。
だから、課長が言っている事もまんざら大袈裟でもないわけだけど・・・・・
「し、失礼します」
戸惑いを感じつつも、やはり繕う顔を見せずに無表情で彼の横を通り抜けて部屋から出ようとしたけど
「本はいいのか?」
すり抜ける寸前で腕をつかまれて歩を止められてしまった。
「大丈夫です。元に戻ります」
居心地悪いこの状態で、彼が戻る気配もなしでは自分が部屋を出て行った方が無難だろうと思ったのに、掴まれた腕はなかなか放してもらえない。
それどころか、追いつめられてわたしの背には棚が当たっている。
タラ~っと冷汗が背中を伝って落ちて行く感覚が、なお更緊張感をマックスにさせているけど、自分で意識して表情を消す事はすでに曲芸の域まで達していることを自認しているわたしは
「課長。まだ仕事が残ってますので戻りたいのですが」
一層意識して感情を殺しまくった。
これは嘘じゃない。
たしかに部長に頼まれた仕事がたんまりと残っている。
ここで時間をロスしてしまっているから、今日のノルマが達成できずに残業は確定だろう。
「自社製品カタログを取りに来たって事は、部長に頼まれた資料本?」
背の高い彼が、背の低いわたしを見下ろしながら話し出し、次第に腰を落として目線を合わせて来る。
「はい。来週使う物ですので、出来れば今週中には目途をつけておきたいので戻ります」
扉側に立つ彼は、部屋から出ないように壁を作っている状態。
「なんで、自分を隠すの?」
わたしの話は丸無視の課長に苛立ちが湧いてくるけど、それも隠し
「隠してません。これが自分です。課長、会議の途中ではないのですか?」
壁を通して、隣からは話し合う声が聞こえて来ている。
「ああ、まだやってるよ。僕は電話がかかって来たから通路に出てきた」
そこでわたしがここに入るのを見て、彼も入って来たのか・・・・
それでも、長い時間退座していることもできないようでチラッとブランド物の腕時計を見ている。
課長職で、ましてや一番最年少の29歳(だったかな?)にしての課長では、役職組では当然一番の下っ端。
サボるわけにもいかないようで
「今日は残業だな?」
表情には出していないと言う自信はあるが、心でも読まれたのだろうか?
ずいぶんと自信満々と聞いてくる彼に無言で抵抗すると
「今日の会議は、昨日よりかは早く終わるはずだ。
残業でなくても、俺が終わるまで待っている事」
それは業務命令なのだろうか?
終業後の事まで指図されなくてはならないのか、そしてそれを容認しなくてはならないのだろうか?
「待つ待たないはお前が決めればいい。まあ、お前の事だから待ってるだろうけどな」
頬に手を当てられて、感情は出ていないようだけど引きつりつつあるのは自覚している。
「・・・・・っふ。どの商品のが欲しいんだ?」
意味ありげに笑ったあと、壁を作っていた体を棚から離して、先ほどのお目当ての棚の方に歩き出した。
固まったままでいるあたしに向かって
「ほら!取ってやるから、言ってみん!」
あぁ・・・・。
踏み台を探していたこともわかっていたのか・・・・・
「ホ行の本をお願いします」
取ってくれるのならありがたい。踏み台を探す手間が省けるし、何よりも早く課長から離れてこの部屋を出たい。
背伸びをしなくても手を上にあげただけですんなりと取れる課長の姿を見ると、自分が低身長なのが嫌になるし、この男の頭をハンマーでぶっ叩きたくなる。
カチャカチャ鳴る音は、わたしには心地よい音だったはず。
それなのに、今のわたしには不快に感じてしまう。
それもこれも、資料室から戻ったわたしに、
「アラーキー!待ってたよ!」
やめてと何度もお願いしてもやめる事をしない、佐藤さんが勝手につけたわたしの呼び名を叫ぶ声にゲンナリとした。
わたしよりも3つ年上(昨日誕生日だったらしい)の佐藤さんは、パソコンが若干・・・いや、かなり?苦手らしい。
エラーが発生すると、すぐにそれを放棄してしまう。
わたしがいなければ戻るまで待つことを優先させる。
結局は、今回の佐藤さんの注文の方に時間がかかってしまい、わたしが自分の仕事に戻ったのは退勤時間の30分前。
わたしに任せるだけだった佐藤さんは、使われていないパソコンを使って、さっさと自分の分の仕事を終わらせることに成功している。
わたし?
「っもう!」
だれもいなくなったフロアで、不機嫌さマックスで声にまで出して仕事をしているよ?
それも、課長の存在を頭から消え去らせるほどにね。
待ってろと言われた事も、会議が長引いているのも忘れてるね。
もう、全員が帰ったと思って、顔には皺が出来るほどに歪ませてキーボードを叩いてますもの。
「遅くなったから怒ってるのか?」
そんな言葉が聞こえて来るとは思ってもいないわたしは「っどぁ!」と謎の言葉を叫んで、思わずイスを後ろにおっ放うほどに驚いちゃってますが?
「なんだ?どぁって・・・」
一瞬、呆れたような顔をした後にすぐに笑い出した福田課長。
「驚かさないでください。もうだれもいないと思ってたのに・・・・」
うしろにすっ飛んで行って、ひっくり返ってしまったイスを元に戻しながら文句を言わせてもらえば
「なんだ、待ってたんじゃなかったのか?」
今度は眉尻を上げて少し不機嫌なお顔。
この人って、いろんな表情を惜しげもなく見せるのね。
油切れの所為か、キュイキュイと変な音をさせながらイスを引っ張って来て定位置に戻しながら座り
「まだ終わらなかっただけです。課長は終わられたんですか?思ったよりもかかってたようですね」
先ほどの課長の予想では、昨日よりも早く終わるだろうと言ってたけど、実際はさほど変わらない時間に終わったようだ。
「会議は終わったけどな」
あぁ、会議だけですか。
「お疲れ様です。わたしはもう少しかかりますので」
こうやって喋っていても、手と視線は仕事に戻っている。
人の事まで心配などしていられない。
「あとどれくらいだ?」
その場で聞けばいいものを、なぜか背中越しに手を伸ばしてマウスを操作する課長に
「課長。重いです」
若干、課長の体重もわたしの背中に乗せられている。
「俺は軽い方だ」
あんたの体重なんて興味はない。わたしに乗せている体を離せと言ってるまでだ!
「だいぶ終わってるじゃないか。残りは明日でも構わないな」
その言葉は、わたしに向かっての問いかけではなかったのですか?
勝手に操作させて保存させて終了させるのはやめていただきたかったですね。
阻止しないように、マウスを持つ反対の手でわたしの体を制御するのも一緒にやめて欲しかったです。
何気に抱きしめられているような錯覚に陥ってしまいますが・・・・・
パソコンの画面はシャットダウンされて光を放つことを終えて、変わりに課長の片腕で抱きしめられているわたし達の姿をぼんやりと映し出している。
片腕で抱かれている状態から、両腕で包み込まれるように抱かれる形に変わって来た時に
「課長?これはどういうことでしょう?」
抱かれている意味が解らない、と問いかけた。
「頭のいいお前ならわかるだろう?俺がお前を抱きしめている」
先ほどの資料室の途中辺りから言葉使いが変わっている。""僕""と自分の事を呼んでいたのが""俺""に、""キミ""か名字呼びだったわたしの事を""お前""と表現しだした。
他の同僚に見せる課長の姿は仮面をかぶった仮の姿か・・・・
わたしと対して変わらないな・・・・・
「なぜ、わたしは抱かれているのでしょう?」
そもそも、それを聞いてるんだよ!
「その答えは一つしかないだろう?」
抱きしめながら首の後ろに顔を埋めるのはやめていただきたい。
こしょばゆいでございます・・・・・
「はて?」
意味が解らずしょうじきにわからないと首をかしげる仕草を取りながら、埋められた課長の顔を振るい落とす作戦だったけど
「逃げるなよ・・・・・」
すぐにまた顔が近づいて来ただけではなく、今度はわたしの顔を押しやるように耳下の首筋に唇を当てられてしまった。
ぞわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・
背中を走る悪寒に、溜まらず体が震えた。
「っふ、弱点はここか・・・・」
首筋が弱い事がバレてしまったようだ。
「あの。わたしは仕事が終わったらしいので帰りたいのですが」
終わらせるつもりはなかったけど、すでにパソコンの電源も落とされたのでは仕方がない。
「ああ、帰ろうか。どこで食べて行く?」
「っはい?食べて行く?」
なぜ、あなたと夕飯を共にすることになっている?
「どうせ、帰ったら食事はとるだろう?だったら食べて帰れば手間が省ける」
・・・・・うん、そうだな。
帰ってから支度をして食べ始めるのは9時半を過ぎるだろうし・・・・
「だろ?ほら、着替えておいで」
抱きしめていた腕をほどかれると、重いと文句を言いながらも暖められていた熱が飛んで行くような切ない気持ちになってしまった。
座っていたイスを引っ張り出して、脇の下に手を入れて立たされると
「ほら!俺に着替えさせられたいのか?」
言いながら制服のベストのボタンに手を伸ばす課長の手を止めて
「それには及びません。では着替えて参ります。が、わたしは帰ります」
もともと一緒に食事をするなんて、わたしはひと言も言っていない。
気を遣う上役との食事なんて、真っ平ごめんだ。
「はいはい。いいから着替えて来いよ」
立ち上がったままのわたしのお尻を叩くのはセクハラですよ?
訴えましょうか?
まあ、抱きしめられていた時点でセクハラでしたけど。
仕方なしに引き出しから小さいバッグを取り出して、更衣室の方に向かった。
・・・・・・・・・・・・
「いらっしゃぁ~い」
≪美咲≫と絞り染めされた暖簾をくぐり抜け、扉を開けて中に入ると和服姿の女将さんがニコリと笑ってこちらを振り向いた。
「あれ?青葉クン久しぶりね?」
課長の顔を見てそう呼ぶ女将さん。
青葉クン?だれ?
キョロキョロとわたし達の他にもだれかお客でも来たのかと探す素振りを見せれば
「お前は上司の名前ぐらい覚えておけよ!」
再び繋がれていた手をほどき、その手で頭を小突かれた。
「青葉クン?」
課長の顔を指さして確認すれば
「そうだ」
不機嫌さマックスの課長が頷いた。
クスクス笑ってこちらに近づいて来た女将さんが
「いらっしゃいませ。青葉クンの会社の方ですか?」
聞きながらあたし達が着ていたコートを受け取ってくれる。
「はい。荒木戸と申します」
背の低いわたしよりも、少しだけ高い目線の女将さんに答えると
「この店の女将の美咲です。この子は田舎が一緒でご近所に住んでいたのよ」
どうぞ、と促されてカウンターに腰掛けた。
週半ばというのに、結構なお客さんでそこしか空いていなかったから。
「お腹が空いてるんだ。適当に出してよ。お酒は、なになら飲める?」
美咲さんに向かって注文していた課長が、最後はわたしに聞いて来て
「じゃあ、とりあえずビール下さい」
仕事終わりと言えばビールが恋しいのはどの季節でも共通な事。
「じゃあ俺も。あ、ここトン汁が美味いよ。食べる?」
うん、食べたいかな?コクリと頷くと美咲さんが
「はい、ちょっと待っててね」
笑顔で受けてくれて、厨房の方に向かって行った。
「課長、東京の方じゃなかったんですね」
てっきりこの洗練されたイケメンさんは東京生まれなのかと思ってた。
「生まれは長野。高校からこっちに来ているから半々くらいだな」
16年間長野で暮らし、その後は東京で暮らしていると言うことか。
「俺の同級生のお兄さんと、美咲さん"
  


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